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サマー・アブロード・プログラム

4年ぶりにSAP(サマー・アブロード・プログラム)としてKLASの12年生(高3)5名が大学のサマープログラムに参加しました。SAPは夏期休暇となる6月とターム1の期間を利用して、英語圏にある大学の夏期プログラムで学習します。

今年度は、カナダのトロント大学(University of Toronto)もしくは米国のサバンナ芸術工科大学(Savannah College of Art & Design)のどちらかのサマープログラムに参加してきました。



生徒たちは、自分の将来のことや興味あることを考えて、勉強する内容を事前に申し込みますが、今年は、芸術、分析学、経済学、気候学、法律学、社会学、建築学などさまざまな分野にわたりました。 以下、米国で芸術に関連したことを学んできた生徒の体験を紹介いたします。


■驚きと慄きの夏
12年生(高3)女子

この夏、私はサマーアブロードプログラム(SAP)で、ジョージア州のサバンナ芸術工科大学の授業に参加しました。アメリカ南部トップの芸術大学での経験は、大きな刺激を私にもたらしました。ここでは、授業、生活、プログラム中の出来事について書きたいと思います。



私が受けたのは、“Fashion Aesthetics and Style”(ファッション関連のビジネス分析)、” Illustrative Anatomy and Perspective” (イラストレーションための解剖学と透視画法)という二つのクラスでした。前者はプレゼンテーションとリサーチ、後者はイラストレーションの実技が中心だったので、全く違った体験ができました。私が一番衝撃を受けたのは、周りの高校生の論理的な考え方です。イラストレーションの授業ではお互いの作品にアドバイスをし合う時間がありました。なぜ説得力に欠けるのか、魅力的でないのか、といった部分を論理的に説明する必要があり、私はかなり苦戦しました。違和感があるのはわかるのに、それが何故かわからず説明できなかったのです。英語力云々ではなく、思考の仕方に違いがあるのだと思いました。

私は、大学付属の寮で3人のルームメイトと生活しました。まず驚いたのは、部屋の寒さです。ルームメイトが部屋を異常に涼しくしたがるのです。常に摂氏19度くらいでした。エアコンの温度を上げても誰かが下げるので、諦めてスーパーマーケットでセーターを買いました。他にも、マシュマロとチョコレートとクラッカーを電子レンジで温めてぐちゃぐちゃに混ぜて食べている人、アフロの中に櫛を収納している黒柳徹子的な人、「この紫色のジュース気持ち悪いよな!」とマクドナルドの広告を笑いながら青いカップケーキを食べていた友達、授業中にピザを2枚平げるクラスメイトなど、周りを見ているだけで面白い人たちがたくさんいました。

しかし、私がアメリカに対して漠然と持っていた「進んだ社会」の幻想はかなり崩れ去ったといえます。カフェテリアで使い捨てのコップと食器を使ったあとに、授業でファッション業界におけるサステナビリティの重要性を学ぶ。実際に行われていることと、メディアや教育の現場で謳われていることとの矛盾を目の当たりにしました。一方、落胆しただけではありません。どのジェンダーを自認する人でも使えるお手洗いや車椅子用のスロープが大学のあちこちにあり、あらゆる人の社会参画の権利を平等にしようという動きには、目を見張りました。

プログラム中は特にトラブルもなく快適に過ごせました。しかし、大学に到着するまで、大学から日本の自宅へ戻るまでにいくつかのトラブルに巻き込まれました。まず、現地の空港から大学へのバスを見つけられませんでした。いろいろ調べているうちに、携帯電話の充電が切れ、コンセントの場所を空港の職員に尋ねたところ、「そのあたりの自動販売機の電源抜いて使っていいよ」とのことでした。そんなことできません。とんでもないところに来てしまったと戦慄していると、1時間半ほどたってバスが現れました。半泣きだったので、プログラムのサポーターの大学生に強めにハグされました。そして帰路。今度こそは何もありませんように…と願って帰りの飛行機を待っていると、予定時刻より1時間遅れるという旨のメールが届きました。また1時間待つと、さらに1時間遅れるというメール。まあ事前に知らせてもらえるだけありがたい…と待ち続け、4時間。やっと乗れた機内で、便がキャンセルになったと知らされた時には、もう何も感じなくなっていました。最終的に空港内で24時間過ごし、無事に帰宅しました。



たくさん驚き、気づき、時にうんざりして、なんとか一ヶ月間を乗り越えました。SAPを通して、いかに自分がコンフォートゾーンの内側でぬくぬくと暮らしていたのかがよくわかりました。今回学んだことをもとに進路を考え直し、現在は愛するヨーロッパでアート関連の勉強を続けたいと考えています。今の10年生、11年生にも海外の大学で学べる貴重なこのプログラムを勧めたいと思います。