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The Hague International Model United Nations (THIMUN) 2025 (ハーグ国際模擬国連)



担当教諭 Wayne Watson

【日本語訳(原文は英語)】
今年の模擬国連は大変上出来でした。ハーグでの対面での会議が再開して以来、3年連続でKLASは実りある会議への参加となりました。これまでのようにハーグのワールド・フォーラム・カンファレンスセンターで開催され、過去2年間のパターンを引き継ぎ、主催者がより良く、より生産的なものにするためにさまざまな調整を続け、会議はまた別の新しい形式を採用しました。主催者は大部分においてその目標を達成しましたが、変更によって新たな課題が生じ、誰もが再び適応する必要がありました。さて、どのようなものだったか振り返ってみたいと思います。

まず、模擬国連に参加するための準備に費やす作業量はかなりのものであることをお伝えいたします。模擬国連に参加することになった生徒たちは、ターム1から準備を始めます。はじめに、国連のことや自分たちが代表を務める国(今年はスウェーデン)または国連関連機関について知識を身につけなければなりません。今年の会議のテーマは「AI が人類に与える影響」、非常に話題性のある挑戦的なテーマでした。割り当てられた国際問題(各国3つづつ)、これらの問題がスウェーデンと世界の他の国々にどのような影響を与え、どのような影響を受けているかについて、十分な知識を身に付ける必要があります。また、リサーチを行い、その結果を発表し、スウェーデンに関わる3つの問題に対する方針声明の作成をしなければなりませんでした。生徒たちが調査する具体的な世界の問題は、それぞれの生徒が自分で選んだ委員会によって異なります。また、ハーグでは全て英語で会議が行われるので、集めた情報を英語で使いこなせるように準備をしなければなりません。これは毎年膨大な作業であり、どれだけ準備しても十分ではないことはわかっており、今年も例外ではありませんでした。今年は、どの生徒も冬休み中に行う必要があった宿題を含め、行うべき準備作業をすべてよく頑張りました。ハーグでは、全員が会議の課題に立ち向かい、その経験から貴重なものを得たと思います。



さて、実際に模擬国連に参加するために私たちは 1月25日(土)にKLASを出発し、ジュネーブからアムステルダムまで飛行機で移動しました。アムステルダムでは、アンネ・フランクの家を見学しました。このツアーは決して楽しいとは言えませんが、間違いなく価値があり、現在の世界情勢にも非常に関連しています。 その後、バスでハーグのホテルへ向かいました。 朝7:30に学校を出発し、長い一日を終えて、夕食の時間を過ぎたころにはみなかなり疲れていましたので、その後は自由時間をとったり、日曜日の計画を立てたりする時間にしました。

1月26日(日)の日中は、観光にあて、アムステルダム市内やユトレヒト市内を訪れました。1月27日(月)私がサポートの数名の生徒といっしょに私が議会で登録をおこなっている間、ほかの生徒たちは夜までハーグで自由時間となりました。夜のスタディホールでは、会議に向けた最終的な準備をしました。



そしていよいよ火曜日から本格的に始まりました。THIMUNは最も規模が大きい模擬国連で、今年は約100カ国以上から約200校の代表者約3200人が集まりました。THIMUN は国連の公式 NGO なので、THIMUN に参加している生徒は、文字通り、国連のために働いているのです。生徒たちは、朝9時から夕方の5時までの長い一日を火曜日から金曜日まで一生懸命がんばりました。また、夜は通常のKLASでの生活と同じように2時間のスタディホールがあり、翌日の準備をおこないました。生徒たちはロビー活動、決議案の作成、オープニングスピーチそして多くの人たちとディベートを行うという試練に立ち向かいました。しっかり準備をしてきた生徒にとっても大変困難なことでした。会議初日の困難な始まりにもかかわらず、生徒たちは諦めることなく、最後までずっと努力を続けました。実際、今年のチームはやる気と熱意は並外れたものでした。最も名誉ある業績である決議案の主提出者には誰もなれませんでしたが、今年のチームは、おそらくそれ以上に価値あることを成し遂げました。それは昨年に続き、全員が期間中に討論に登壇したのです。会議の主要提出者になることはチームにとってもちろん価値のあることですが、チーム全員が期間中にディベートで発言することは、チーム全体にとってさらに素晴らしい成果であり、通常は起こりえないことです。当然のこととして、非常に誇りに思いました。

2月1日(土)、スイスへ戻るためにスキポール空港へ移動しました。すべてが刺激的な1週間となりました。生徒たちは、会議への参加だけでなく、世界中から集まった自分と同じような人たちとの新たな友情を築くことで、世界についてだけでなく、自分自身についても多くのことを学んだことと思います。そして、MUNとTHIMUNがKLASでの思い出の一部としてずっと心に残ることを願っております。

今年参加した生徒たちの努力と準備はかなり良かったようですが、これは常に改善に努めるべき点です。ロビー活動の日である月曜日には、チームの何人かが思うように準備できていなかったことがすぐに明らかになりました。幸いなことに、木曜日には新たに2回目となるロビー活動のセッションが追加され、最初の経験から学び、改善することができました。どれだけ準備に努力と時間を費やしたとしても、この競争の激しい会議で自分の力を発揮するのに十分な準備ができたと感じた生徒は一人もいなかったというのが正直なところです。どんなに優秀でも、それはとても難しいことなのです。

しかし、時が進むにつれて、より多くの KLASの生徒が発言できるようになりました。 さて、会議中に発言する機会を得るということ自体が困難な仕事なのです。たとえあらゆる機会に発言するためにプラカードを掲げたとしても、討論会の議長が彼らを選ぶという保証はありません。 決意と根性と忍耐が必要でしたが、今年の生徒たちはしっかりと準備をしてプラカードを掲げ続け、発言のチャンスを掴みました。 上で述べたように、最終結果として、今年の会議に出席した KLAS の代表者全員が討論で発言しました。大変素晴らしいです。



しかし、私が時間をかけてこのすべてを説明するのは、単に彼らの素晴らしい努力を賞賛するためではありません。 むしろ、模擬国連は誰にでも参加できるものではないことを保護者や生徒たちに理解して欲しいからです。世界で最も権威のある、競争力のある模擬国連の会議に行く心構えを生徒にもってほしいのです。その結果として、今年模擬国連に参加することを選択した生徒が向き合ったチャレンジについて強調したいと思います。会議の主である討論に参加する機会を得るためでさえも、生徒たちはしっかりと指針に沿った議論ができなくてはなりません。そのためには、議論で使う英語を理解できなければなりません。その英語を理解するために、生徒たちは十分に英語のリスニング力を上げ、可能な限り英語を使わなければなりません。熱心な生徒は、授業や予習のときなど必要なときだけではなく、授業以外で英語を使う必要がないときでも、出来る限り英語を使おうとしています。努力しているかどうかを見れば、模擬国連のような舞台で成功できるか明確に予想できます。来年模擬国連に参加したい生徒はこのことをよく覚えておかなければなりません。行動力があり、必要なときだけではなく、授業以外の自由な時間においても率先して英語を使っていくことができる積極的な生徒を求めます。量よりも質がはるかに重要であることを覚えておいてください。

一言で言えば、発言せずに1週間の会議にただ座っているだけでは、1週間KLASの授業から離れている意味がありません。来年参加する生徒を選ぶときに判断されるのは、模擬国連の会議で発言できるように、これまでに努力と時間を注いできた生徒でしょう。

上記を全て考慮して、真剣に物事に取り組む意志のある生徒に、模擬国連への参加申込をすることを強く勧めます。しかしながら、模擬国連に参加するには、厳しい選考があることを心に留めておいてください。参加を希望する生徒は、審査の対象になるためにしっかりした動機、英語力、優秀な成績そして良好な生活態度が求められます。これらの基準を満たせば、模擬国連は自分自身に挑戦する絶好の機会となることでしょう。

 

■貴重な経験
(11年生女子)

頼れる同級生や先輩は誰一人周りにいない。それは、考えていたよりも大変なことでした。

世界中から3000人以上の同年代の人達が約4日間の模擬国連のためにオランダのハーグに集まり、国際問題についてそれぞれのコミッティーで英語を用いて議論をする。模擬国連について簡単に説明すると3行にも満たないのですが実際に模擬国連に参加するには、たくさんの課題や毎週のアクティビティをこなす必要があります。KLAS生には時にすごく忙しい時期があり、特にクモリンピックの準備期間などがそれに当てはまります。この間にもアクティビティはもちろん、課題も出されます。一言でいうと、タイムマネージメントがとても大事になってきます。これは指導をしてくださっているワトソン先生がよくおっしゃる言葉の一つでもあります。それらを乗り越えてようやく今回ハーグに行くことができました。



会議初日は、会場に着いてもあまり実感が湧かず、ソワソワした気持ちでいました。ついに同級生や先輩達と別れ、私のコミッティーの場所に向かっている途中、たった一人でやっていけるのだろうか?こんな拙い英語で大丈夫だろうか?と急に不安になりました。KLASの先生方は、基本的に分かりやすい英語を使ってくださいます。また、文法や発音を少し間違えてしまっても気にせず、すぐに直してくださいます。ところが、模擬国連に参加した人達の過半数以上は英語を母国語としており、残りの母国語ではない人達も問題なく話し、聞き取り、理解できます。その輪に入ることはすごく怖かったです。その状態のまま模擬国連が始まってしまい、みんなが楽しそうに交流しそれぞれのグループで話し合いをしている中、参加したグループの中であまり発言や提案ができずにいました。雰囲気や流れについていのにも必死で、自信をなくし、レザンに今すぐに帰りたい、KLAS生に会いたいと何度も思いました。しかし、そんな萎縮していた私をサポートし、友達になってくれる人もいました。その子とは今も連絡を取り合っています。そうして一日目は終わりました。

二日目のディベートでもついて行くのに必死でした。この日も心細さはありましたが仲間も頑張っているのだと考えると、負けてはいられないという思いで臨みました。この頃から体調を少し崩してしまいましたが、初日に感じた悔しさを糧に、その日は周りの人に私からたくさん話かけることができました。迎えた三日目は、私の模擬国連の思い出で最も記憶に残っています。午前中のディベートの最中、勇気を振り絞りプラカードを何回も掲げました。スウェーデンと名前を呼ばれたとき、当たった安堵と同時に緊張しました。他国のスピーチに対して質問をする、たったそれだけなのに足が震えました。約120人の人達が私にほんの少しの時間だけど注目をする。その場から逃げ出しそうになるのを堪え、無事質問を終え席に戻ると隣の子が頑張ったね、と褒めてくれました。また午後は、誘ってくれた人のグループに入り最後の話合いをしました。幸運なことに私が用意した案を少しですが採用してくれたのです。全ての日程が終わり、ホテルに帰る途中、約半年間、本当に頑張ったなと強く思いました。そして何よりも、こんな私を常に励まし、一緒に乗り切ってくれた仲間にすごく感謝しました。

最後になりましたが、THIMUN2025メンバーを支え、温かい応援をしてくださった先生方、保護者の皆様、そして何よりワトソン先生、本当にありがとうございました。

■二年間のマラソンを終えて
(12年生女子)

今年の二月上旬に開催されたTHIMUNを経て、私たちの一年、または二年にわたる長いマラソンはついに終わりを迎えました。会議最終日の定例報告会でメンバーの顔に浮かんでいたのは、満足そうな笑顔と、「自分はやり切った」という達成感でした。

今年度の模擬国連ではチームの代表であるアンバサダーを務めました。私たちはこの一年間、各自の議題についての調査、解決案の作成、本番に向けたディベートの練習など、4日間のTHIMUNに向けて全力を注いできました。今回は北欧のスウェーデン代表として、世界中から集まった高校生大使たちとディベートを交わしました。私はGA1という、AIが関わる軍事問題について解決策を探る委員会に所属しました。

THIMUNで大使として発言するためには、プラカードを挙げ、会議の進行役に指名されなければなりません。しかし、そのプラカードを掲げることには、想像以上の緊張が伴いました。頭では「挙げなければ」とわかっていても、恐れで腕が動かないのです。流暢な英語を操る参加者たちの前で発言するには、大きな勇気が必要でした。去年よりも英語力が成長したからこそ、自分の考えや表現の拙さを痛感し、レベルの高いディベートで発言することに強い恐怖を覚えました。



ディベートの初めのうちは、話すことはもちろん、プラカードを掲げることさえできませんでした。しかし、周りの席の大使や仲良くなった人が登壇し、自信を持って話しているのを見て、「自分も頑張らねば」と決意を固めました。プラカードを挙げる回数が増えるにつれ、少しずつ恐怖を乗り越えられるようになりました。次第に「私も彼らのように堂々と意見を伝えたい」「もっと良い解決策にしたい」と強く思うようになり、最終的には自信を持って発言できるようになったのです。あの瞬間に感じた恐怖を超えるものは、きっと人生でそうそうないでしょう。だからこそ、今はどんなことにも挑戦できる気がしています。

MUNは、その怖さだけでなく、他にも多くの大切なことを私たちに与えてくれました。その最たるものが、「最初の一歩を踏み出す勇気」です。英語で話すことを想像して身震いした瞬間、プラカードを掲げるのをためらった時間、自分たちの意見が受け入れられるかどうかへの不安。こうした一つ一つの壁に直面するたびに、私たちは恐怖に立ち向かい、一歩ずつ前へ進んでいきました。

完璧でなくても、自分の意見を伝えることの大切さ、そしてその一歩を踏み出すことで広がっていく可能性を知ることができました。最初の小さな一歩が次の一歩を生み、やがて大きな自信へとつながります。その勇気がなければ、世界中の高校生と意見を交わし、お互いの価値観を尊重しながら、より良い解決策を一緒に考えるという貴重な経験はできなかったでしょう。MUNを通して得た勇気は、これからの人生においても、困難な局面で私たちの背中をそっと押し続けてくれると思います。

最後に、私たちMUNチーム2025を心身ともに支えてくださった保護者の皆様と先生方、そして教え導いてくださったワトソン先生。この場を借りて、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。