教育改革とKLASのアクティブ・ラーニング
2020年に向けて日本の大学入試と高校教育が大きく変わることから、それに合わせ、KLASでもアクティブラーニング(以下AL)を取り入れることで授業の改善に取り組んでいます。
本校の取り組みをご紹介いたします。
•教育改革とKLASのアクティブ・ラーニング
校長 渡邉 博司
2020年から大学入試はどのようになるのでしょうか。すでに入試は変わりつつあります。
・「永遠に生きられれば人は幸せだろうか」
(2014年早稲田大学政経学部・英語)
・「『想像力』と文学部で学ぶ意義の関わりについて、あなたの考えを述べなさい」
(2015年慶應大学文学部・小論文)
2020年以降は、これらのように従来の断片的な知識を暗記するだけでは乗り越えられない、持っている知識を上手につなげて知識の背景を論じる思考力が試されるようになるでしょう。
教育改革の核心はめざす学力の変化にあります。これまでの「知識中心の学力」よりも「思考力、判断力、表現力」が重視されます。現行のセンター試験にとってかわる「大学入試共通テスト」の例題も公表され、大学入試の将来像もこの方向で確認されています。
新しい学力観に合わせて高校教育も「主体的・対話的な学び」を重視することが求められます。全国の高校は今後の数年間、音を立てるように変わっていくでしょう。
この「主体的・対話的な学び」は、実はKLASで創立の1990年以来ずっと実践してきた学びのスタイルでした。KLASの英語、ESLはコミュニカティブ英語と言って、教室内で意味を伝え合うことで英語のコミュニケーション能力を育てるやり方だからです。
保護者の皆さんがKLASのESL授業を見学されたとき、教室がかなり活動的でにぎやかであることに気づかれます。それは聞いたり話したりするタスクが行われているからですが、自分の気持ちや考えを伝え合うことで、生きたコミュニケーションの練習をしているのです。
タスクは「聞く」「話す」だけでなく「読む」「書く」でも行われます。言いたいことや考えを正確に少し高度な形で伝え合うことは、思考や表現の効果的な訓練になっています。KLASの生徒が日本語における表現力や作文力に長けているのは、国語の指導に加えて英語における理解や表現の練習を繰り返しているからです。論理的で直線的な英語でこうした練習をすることで、分析したり構成したりする力が随分と伸びて、それが日本語表現にも影響していると思われます。
ESLだけではありません。英語で行われる一般科目も「思考力、判断力、表現力」に大いに役立っています。思考力を伸ばすには、ものごとを批判的に分析することで理解し、得られたいくつかの要素の関連性をとらえて再構成することで表現する、そうした練習が必要です。そうした知的な活動が適切になされるのがResearch ProjectでありGlobal Issuesです。文学作品を扱うEnglish Literatureもそうでしょう。暗記科目の代表のように言われる歴史においても、World Historyでは原因/結果のつながりが重視され、critical thinkingといって、事象を分析的にとらえることを求めています。
翻って日本語で行う教科ではどうでしょうか。そもそも英語系の科目の影響を受けて日本の高校よりアクティブではあるのですが、今後はそのアクティブさをさらに強めていきます。現行の「知識中心」の教科書や入試の下では限界はあるのですが、今できることを中心に「主体的・対話的な学び」への移行を進めています。
•ペア・グループワークを取り入れて学習を深化させる
•ワークシートの活用で応用力の習熟を段階的に進める
•口述、記述をさせ、個別にアドバイスすることで表現力を伸ばす
•リテラシー(情報の読み取り)を重視することで分析力を高める
•効果的な問いかけと対話により理解を深化させる
•結果よりも論理や因果関係を重視して分析的に理解させる
このような取り組みが各教科で進んでいます。まだまだ日本では見慣れないやり方ですが、KLASの生徒はESLなどの授業でこうした学び方に慣れており、抵抗なく受け入れています。
こうしたALの流れをただ単に社会が必要とするからと受動的に受け止めてはいけないと思います。少なくとも、KLASでのALには次のような3つの目的があります。
一つは、ALによってKLAS生の強みをさらに強固にすることです。従来からKLAS生は思考力、表現力に長けていると目されていますが、それは述べたような背景から生まれていることであり、その成果が国内のAO・推薦入試の結果に表れているのだと言って良いでしょう。KLASにおけるさらなるAL推進は生徒の特長を強めることになります。
二つ目には、授業をより良いものにするためです。先生方には「AL導入によって、各自の授業を改善させましょう」とお願いしています。
最後に、日本における入試、教育改革に沿うためです。本校独自の教育環境を生かして、諸改革に先駆けて本校ならではの教育をより良いものにしていきたいものです。
このように、ALによる学校改善を能動的に進めていきたいと思います。