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冬学期の課外活動

ヨーロッパの中央にあるスイスの地理的特性を生かし、KLASでは多彩な活動の機会を設けております。ほんの一部の活動とはなりますが、リポートを紹介いたします。

■~Musique et Neige Festival~
担当 中島 亜紀

ヨーロッパで暮らす醍醐味の一つに、世界的に活躍する音楽家によるコンサートや音楽祭に行く機会に恵まれていることが挙げられます。数ある音楽イベントの中でも、レザンから車で30分ほどの所にあるVers-l'église という村で毎年開催されるMusique et Neige (音楽と雪)フェスティバルは私の好きな音楽祭の1つです。



「スキー帰りに音楽を楽しみましょう」という趣旨で、1月から3月の毎週土曜日の夕方に多彩なコンサートが行われます。55年続くこの音楽祭は音楽を愛する地域住民により支えられています。会場は1709年建造の教会で、木造建築ならではの温かい音響と、演奏家との距離が近いホームコンサートのような雰囲気が大きな魅力です。

ヨーロッパならではの本格的な音楽に触れて欲しいという思いから、毎年本校の生徒たちを誘って訪れています。今年は生徒たちと共に次の2つのコンサートを堪能しました。

1つ目はチェコ共和国の弦楽四重奏楽団、Talich Quartetによるコンサートです。チェコ共和国が誇るドヴォルザーク、ヤナーチェク、スメタナなどの作品を中心に演奏活動を長年続けてきた楽団で、その分野では第一人者だと紹介されていました。チェコ共和国が輩出した音楽家の生年もしくは没年には数字の4が含まれていることが多いことから、2024年の今年はチェコ音楽界にとって特別な一年だそうです。そのような年の初めに、チェコ共和国まではるばる行かずして、本場の音楽を聴けたのは幸いでした。



2つ目はテノール歌手、ソプラノ歌手、ハープ奏者によるコンサートです。3人ともスイスの音楽院の卒業生だそうですが、テノール歌手の方はメキシコ出身、ソプラノ歌手の方はドイツ出身、ハープ奏者の方はイタリア出身と、国際色豊かで、いかにもスイスらしいと感じました。コンサートは地中海に面したヨーロッパの国々の音楽をテーマにしており、スペイン、フランス、イタリアの作曲家の手によるそれぞれの言語の歌が感情豊かに奏でられました。

ハープの音色と歌声がとても調和しており、聴きながらそれぞれの世界に引き込まれ、各国を旅しているような気分になりました。コンサートの最後に知ったのですが、ハープによる伴奏は珍しいらしく、演奏者自身が楽譜を書き起こして実現した、とても希少なコンサートだったということです。

思い切ってキャンパスの外に出てみると、日常では味わえない気づきや刺激があるものです。コロナ禍が終わった今、生徒たちにはこのような機会を積極的に活かしてもらいたいと願っています。

 
■~JICAセミナー~
担当 川畑 博

独立行政法人国際協力機構(以下JICA)緒方貞子平和開発研究所が主催するセミナーが行われ、生徒16人と教員3人がオンラインで参加しました。



今回のセミナーのテーマはJICAが東ティモールで20年に渡り、おこなってきた大学支援のことでした。国際協力事業で大学への支援というのはイメージしにくいものかも知れません。実際の例を挙げると、自然災害にあった時の復旧には土木、建築、電気、通信などの社会を支えるインフラ分野の専門家や技術者が必要ですが、自国にそのような人材がいなければいつも他国の助けを求めなければなりません。

一つの国家が自立するためには、専門的な知識を持った人材が必要となります。東ティモール独立当初は工学分野の大学がなく、高度な技術を持った人材を育成する必要がありました。そこで職業訓練校を大学へ発展させて人材育成を行うという目的でJICAの支援が始まりました。支援を始めた頃の困難なこととして紹介されたものとして次のような実例が紹介されました。

・小学校で(1/2)+(1/3) = (2/5) という計算方法を習い、その知識のまま大学へ入学した学生がいた。
・十分な数の椅子がなく学生は立ったままテストを受けざるを得なかった。

このような様々な困難がありましたが、東ティモール大学工学部出身者の中には日本の大学へ留学し修士課程や博士課程で学び学位を得た後、東ティモールに戻って政府の要職に就くような人も出て来ました。

金銭的、物質的な援助だけでなく、人との結びつきを通して人材を育成することに主眼を置き続けてきた日本の支援は現地の方々からも大いに評価をされていることを知ることができました。

 
■ウクライナからの子どもたちとの交流支援(社会奉仕部)
ソーシャルサービスクラブ(社会奉仕部) 10年生(高1)女子

皆さんはウクライナ語を聞いたことはありますか? 実は私、少しだけウクライナ語を知っています。なんで知っているのかって? それはKLAS生活をしている生徒にとって身近にいる人たちのお陰です。興味のある方は、ぜひこの文章を読んでみてください。

KLASがあるレザンには、アフガニスタンとウクライナの二つの国から来た避難民がいます。私たち社会奉仕部のボランティア班は、主にその人たちへの支援をしており、具体的には、毎週、私たちぐらいの年齢のウクライナ人の女の子たちに向けて日本語教室を開き、日本語やウクライナ語を教えあったり、週末には小さな子どもたちのお世話をしたりしています。私はそのボランティア班のメンバーとしていろいろな活動をしてきました。

今、こうしてボランティア班についての文章を書いている私ですが、実はKLASに来るまでボランティアの経験が浅く、しかも言葉が全く通じない人たちへのボランティアはしたことがありませんでした。ですから、初めての活動の時には、“相手の人が嫌な思いをしないかな”と内心ドキドキしていましたが、実際そのようなことは全くなく、暖かく迎えてくださったので、私自身本当に安心しました。

「相手の言語が英語じゃないから何を言っているのかわからなくて怖い」とか「考え方が日本と違うから全然分かり合えないかもしれない」などたくさん心配なことがありました。でも、実際相手と関わってみると分かりますが、言葉が通じなくてもジェスチャー、表情、そして仲良くなろうとする態度があれば、誰でも仲良くなれちゃいます!

避難民の小さな子どもたちと一緒に遊ぶと言いましたが、実際、母国語が違う子どもたちと遊ぶことはとても大変です。たくさん話しかけてくれるのですが、ウクライナ語なので何を言っているのか全くわからず、翻訳機を使おうとしても子ども達はまだ文字が読めないので使うことができません。その場合、私たちは笑顔で、そしてずっと隣に寄り添うことしかできません。ですが、それでも子どもたちは可愛い笑顔で仲良く接してくれます。小さな子どもたちの笑顔を見ていると「本当にこの子たちの母国では戦争をしているのかな」と思うぐらい元気で可愛いので、逆に私が元気をもらっています。

「もしかしたら明日戦争が終わるかもしれない。そして母国に帰ることができるかもしれない。」そう願って避難民の方たちは毎日を過ごしていると思います。今、私たちにできることは、相手の人たちが「KLAS生と関わって良かったな。レザンに来て良かったな」と思えるように頑張ることです。

私たちはKLAS生活の中でこれからもっとたくさんの避難民と関わっていく機会があるかもしれません。そんな時に、相手の人たちにもっともっと自分のことを教えたいと思えるような人になることを目標として、これからも私たちができる最大限の力を使って、ボランティアを続けていけたらなと思っています。